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持続可能な未来のために、デザインができること。


『消費社会のリ・デザイン』を読み終えました。
これまで消費主義的に欲求を満たしてきたライフスタイルでは環境への負荷が高く、持続可能性が低いということ。持続可能な未来のためには「物質的・経済的な豊かさ」から精神面での欲求を満たす「文化的な豊かさ」への価値転回が必要だということが様々な観点から述べられています。

その中で興味深かったのは「文化的な豊かさ」の必要性について述べられていた以下の点です。
  • 絶対的にも相対的にも精神的な豊かさに物質的な豊かさは関係ない『幸福の心理学/マイケル・アージャイル』
  • 「経済成長」と「幸福」は必ずしも相関関係に無いことから、精神的な豊かさを求めるべきである『GNH/国民総幸福量』
  • 自我欲求(差別化の欲求意識)から、さらに上の段階である自己実現欲求(精神面での充足)へシフトし、多くの人が社会貢献の考えを持つことで豊かな社会となる『マズローの欲求5段階説』
このことから、「文化的な豊かさ」は「物質的・経済的な豊かさ」の延長線上には無いということが示されており、多かれ少なかれ大量消費社会を助長してきたデザインの役割も変わらなければならないということです。

では、その時デザインは社会のために何をすべきかについて、以下の部分が参考になります。
デザインは自己完結することなく、生産・購買・使用・廃棄・再生というトータルなシステム、及びモノをとりまく社会、さらにそれを越える地球的環境との関係性においてソーシャルにデザインされるべきである
つまり、これからのデザインが担うべきことは、問題を解決するにあたって、見た目の美しさなどの表層的なことだけでなく、問題の本質を捉えトータルにデザインしていく必要があり、IDEOのCEOであるティム・ブラウン氏の言う、直感と分析能力のバランスがとれた「デザイン思考」がより重要になってくるのではないかと思いました。

持続可能な未来のために、デザインがしなければいけないこと。
それは「人間を中心に地球が回っているのではない。地球を中心に人間が回っているのだ。」という意識の転回がおこせるような仕組みを根本からデザインしていく姿勢が大事だなと感じました。

社会におけるデザインの役割を考えていく上で多くの示唆を与えてくれる本です。

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