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Showing posts with the label 読書

AvenirとFuturaに込められた、共通する1つの想い。『30 Essential Typefaces for a Lifetime』

30 Essential Typefaces for a Lifetimeが届きました。 渋谷のLIBROで見て欲しいなと思い、何となくamazonで調べてみたら海外の書店だと新品で半額以下だったので、書店にいながらもamazonで注文してしまいました。 アメリカからの発送でよほど過酷な旅をしてきたのか、新品にもかかわらずカバーがくたくたで、労をねぎらってあげたいぐらい疲れた本でした。まあ、半額以下だったのでよしとします。 本の内容は、世界中で多く使用されている主要な欧文書体の制作背景・主な用途・作品事例が様々なデザイナーのインタビューとともに掲載されています。 Avenir,DIN,Frutiger,Sabon,Times New Romanなどについてまとめられていて、様々な定番書体の背景を理解するのにとても参考になります。 和書だと欧文書体に関する本が限られてくるので、英語を身につけて洋書で知識を広げる事の大切さを痛感します。 この本で面白かった部分は小林章氏のAvenirついての話です。 ・「Avenir」は「Futura」より良いデザインを目指した書体(Futuraとはラテン語で「未来」の意味) ・Avenirはフランス語で「未来」を意味する AvenirはFuturaを出発点とし、共に未来を意味する書体でありながら、より良い未来への想いが込められた書体だということです。 書体の名前の由来を知る事で、また違った視点で関わり合う事が出来る。 知れば知るほど面白い世界ですね。

『文字をつくる9人の書体デザイナー』から学ぶ、デザインへの3つの姿勢。

数々の書体がどんな人によって、どのように作られているのかとても興味があったので読んでみました。 タイトルの通り永く愛される書体を創り上げてきた人の書体デザイナーの方々のインタビューが豊富な図版と美しい写真でまとめられている本です。 文章量があまり多くないのですぐに読み終えることができますが、長年書体デザインに携わってきた方々だけに、デザイナーの方々のそれぞれが文字に対する哲学を持っていて、含蓄のある言葉がたくさんあります。 そのなかで、特に印象に残った部分を3つと、そこから何が学べるかを考えてみたいと思います。 ●物事の原理を知ること 鳥海修氏が写研時代の『一番文字が上手な人』に文字がうまくなる秘訣を探ろうとしたときのこと。  「橋本さんに文字のことを質問すると、『筆で書くとこう。だから明朝体のときもこうなるんだよ』と、『筆で書くと』が枕詞のように話に出てきた。だから書道をやろうと思ったんですね。」 今はMacがあれば寸分のズレもない円や曲線が簡単に描け、フォントも容易につくることが出来ます。しかし、文字というものは手で描かれたものが起源であり、すぐにコンピューター上でつくるのではなく、書道などで実際に自分の手を動かして文字を書き、筆の動きを体で感じる事で、なぜこの形になるのかという必然性を知ることで、経験に裏打ちされたデザインができるのではないかと思います。 ●先入観や知識にとらわれない 西塚凉子氏が卒業制作で書体デザインを考えたときの事。  「『良寛』は通常の日本語と同じ様に、四角い枠の中に収められてつくられている。じゃあ私は筆書系の書体でもっと動きのあるものをつくってみようと思ったんです。そのころはまだフォントの知識がなかったので『四角に入れなくてもいいじゃん』みたいに勝手に思ってたんですね(笑)」 通常グラフィックデザインを仕事にしているならば文字が四角の仮想ボディに収まっている事は当然知っているべき事なのですが、西塚氏はその知識がなかったからこそ、その四角い枠を飛び越えた発想が出来たのだと思います。知識は時として柔軟な発想を妨げるということであり、既存の枠を取り払い、先入観にとらわれないことが大切なのではないかと思います。 ●感覚を言語化する 大平善道氏が写植オペレーターとして働いていた時、いつも同...

持続可能な未来のために、デザインができること。

『消費社会のリ・デザイン』を読み終えました。 これまで消費主義的に欲求を満たしてきたライフスタイルでは環境への負荷が高く、持続可能性が低いということ。持続可能な未来のためには「物質的・経済的な豊かさ」から精神面での欲求を満たす「文化的な豊かさ」への価値転回が必要だということが様々な観点から述べられています。 その中で興味深かったのは「文化的な豊かさ」の必要性について述べられていた以下の点です。 絶対的にも相対的にも精神的な豊かさに物質的な豊かさは関係ない『幸福の心理学/マイケル・アージャイル』 「経済成長」と「幸福」は必ずしも相関関係に無いことから、精神的な豊かさを求めるべきである『GNH/国民総幸福量』 自我欲求(差別化の欲求意識)から、さらに上の段階である自己実現欲求(精神面での充足)へシフトし、多くの人が社会貢献の考えを持つことで豊かな社会となる『マズローの欲求5段階説』 このことから、「文化的な豊かさ」は「物質的・経済的な豊かさ」の延長線上には無いということが示されており、多かれ少なかれ大量消費社会を助長してきたデザインの役割も変わらなければならないということです。 では、その時デザインは社会のために何をすべきかについて、以下の部分が参考になります。 デザインは自己完結することなく、生産・購買・使用・廃棄・再生というトータルなシステム、及びモノをとりまく社会、さらにそれを越える地球的環境との関係性においてソーシャルにデザインされるべきである つまり、これからのデザインが担うべきことは、問題を解決するにあたって、見た目の美しさなどの表層的なことだけでなく、問題の本質を捉えトータルにデザインしていく必要があり、IDEOのCEOであるティム・ブラウン氏の言う、直感と分析能力のバランスがとれた「デザイン思考」がより重要になってくるのではないかと思いました。 持続可能な未来のために、デザインがしなければいけないこと。 それは「人間を中心に地球が回っているのではない。地球を中心に人間が回っているのだ。」という意識の転回がおこせるような仕組みを根本からデザインしていく姿勢が大事だなと感じました。 社会におけるデザインの役割を考えていく上で多くの示唆を与えてくれる本です。

アップルvs.グーグル

デジタル社会において非常に大きな力をもった2つの企業について書かれた本。 「アップルとグーグル」この2つの企業についての言説はネット上でもよく散見されますが、まとまった形で書かれたものはあまり無いので本書を読みました。 2社の動きを起点に、iphoneやipadの登場で社会に何が起こっているか、そこから日本の企業は何を学ぶべきかを解説されてあります。 全体像の把握という感じで、あまり深く解説はされていないので、普段からIT系の情報をくまなくチェックしている方が読まれると少々物足りない感じがするかもしれません。 アップルについて非常に詳しい小川浩氏と林信行氏が、書かれているのでどころどころのジョブズの名言の引用が非常に印象的でした。 なかでも特に印象的だったのが日本の企業が長期戦略に失敗する理由について解説されている以下の部分です。 「何か問題を解決しようと取り組むと、最初は非常に複雑な解決方法が頭に浮かんでくる。多くの人々はそこで考えるのをやめてしまう。でも、そこでやめず、問題をさらに突き詰め、タマネギの皮を何層かむくように頑張っていると、しばしば非常にエレガントなデザインにたどりつくことができる。多くの人々は、そこにたどり着くまでの時間もエネルギーもかけていない」 アップルなのにオニオンかい、と、ツッコミを入れたくなる感じがありますが、要は問題解決のためにはとことん考え、その上で無駄を削ぎおとす必要があるということでしょう。 アップルとグーグルから何を学び、活かして次へとつなげていくか、多くのヒントがつまった本でした。