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タイポグラフィを「学ぶ」から「楽しむ」体験へと変える。Typography Insight。

先日発売したタイポグラフィ学習アプリ「Typography Insight」をいろいろと試してみてみました。
書体のエレメントの名称や歴史など、タイポグラフィの基礎を実際に手を動かして学ぶ事が出来て、これまでにない体験は「学ぶ」というよりも実践して「楽しむ」という感覚で、とても面白く、新たな可能性を感じました。
そこで、その面白さをより多くの方に知ってもらいたいと思ったので、Typography Insightについて色々と面白い点を紹介してみたいと思います。


考え抜かれたコンセプト通常は完成物としてのアプリしか公開されていませんが、Typography Insightはドキュメントとしてアプリが出来るまでのプロセスを詳細に残していて、着想から出来上がるまでの思考のプロセスがとても参考になります。
これまでの紙の本の問題点を解決するところからアプリの企画をスタートしていて、作者は以下の性質を問題点としてあげていました。

比較性
書体同士を比較するのが物理的に難しく、細部を比較する際はIllustratorなどのソフトウェアを立ち上げなければいけなかった。

検索性
書体やデザイナー名前などを調べたりする際の方法が、カテゴリやインデックスなどの大きな枠組みしかなく目的の書体を探し当てるのに手間がかかる。

詳報性
情報のスペースが限られているので見本の大きさが数種類しかなかったりと、書体を詳細に観察することが難しかった。

関係性
ページネーションに従って情報が構成されているのでそれぞれの書体のカテゴリやデザイナーと書体の関係性が分かりづらかった。

デザイナーならどれもウンウンとうなずける内容ですね。
上記にある様な紙の本の問題点を洗い出し、それらを解決した上でipadの様なマルチタッチUIを活かした「簡単かつ手軽に、楽しく学習できる」ということをコンセプトにして開発したそうです。

アプリだけでなく、その背景にある考えやストーリーを共有する事で、開発者とユーザーの両方の視点で考えることができて面白いです。


アナログの体験がそのままに
書体を並べたり、重ねたりと、Typography Insightで行うことはIllustratorなどのソフトウェアでも実現可能ですが、決定的に違うのは実際に文字に触れて操作するということ。それによって、マウスやキーボードを介する事無く、書体をプリントアウトして切り貼りするように、従来の方法論で書体に触れることで、書体に対するバランスの繊細な感覚を身につけることができます。


進化する教科書
現在のインターネットでは完成されたプロダクトを世の中に出すよりも、不完全な物をユーザーの声を聞きながら協同で作り上げていった方がうまく行くといわれています。
Typography Insightも現在は基礎的なものだけで、搭載フォントや書体関連検索の機能、日本語や中国語など他言語対応していくとのことで、これからの進化が楽しみです。

テクノロジーの進化が、学びの体験を変えていくということを体感できる。
タイポグラフィに関わるすべての人へ、必携のアプリです。


関連リンク
Typography Insightホームページ
Thesis Paper(制作プロセスの資料PDF)
Typography Insight - cre8ive.kr


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