Skip to main content

グラフィックデザイナーとしての5年間で学び、これからも大切にしたいこと。

朝、通勤をしていると新社会人の初々しい姿をみて、自分が新米デザイナーだった頃をふと思い出しました。

新人デザイナーとしてスタートした時、その先に待ち受けるデザインへにワクワクしながらも、自らの力はどれだけ通用するのか、デザイナーとしてきちんとやっていけるのか、不安と希望が入り交じっていてとても緊張していたのを覚えています。

さて、たくさんの人が新しいスタートを切る中で、私自身も5年間勤めた制作会社を退職し、この春から、スタートアップで新しいサービスのデザインをさせていただく事になりました。

そこで、新たなスタートを切るにあたって、これまでを振り返り、グラフィックデザイナーとしての5年間で学び、これからも大切にして行きたいと思うことを記しておこうと思います。

自分自身にとっては初心に返る意味も込めつつ、新米デザイナーの方には、これからのデザイナーとして経験を積んで行く上で、何かの肥やしになれば幸いです。


無駄なことなんて一つも無い
新人の頃は、とにかくデザイン以外の雑用を任される事が多いです。資料さがしや電話番、朝イチでの掃除などなど… 
「デザイナーとして入ったのにいつになったらデザインをまかされるんだろう」と多くの人が最初にぶつかる壁であろうと思います。
ただ、それらを振り返ってみると、それらの雑用すべてが良いデザインをつくることにつながっていたのだと思います。
資料探しは、部屋を覆い尽くすほどの膨大な雑誌や画像の中から、最適な資料を取捨選択する「判断力」を。
朝の掃除では、ゴミ箱から溢れるほどの先輩達が徹夜して作ったカンプを見ながらそのプロセスを追う「思考力」を。
任された仕事に意味が無かったら意味を見いだすこと。デザイナーの仕事の本質は意味を創造することだと思うからです。


デザインだけでは丸腰である
さて、いざデザインを任されるようになってくると、学生の時に課題としてやっていたデザインとは大きく違うことに気付きます。
仕事としてのデザインは、多くの人が関わってくるもので、それらの人々すべての質問や要望を聞いて調整していかなければなりません。
それらすべてを受け入れてしまうと結局何が言いたいのか良く分からないデザインになってしまいがちで、理由なきデザインは、丸腰のまま戦地に放り出されたかのように、要望と質問の矢にさらされます。
そこで有効なのは、なぜその書体にしたのか、なぜその色にしたのかといった様な理由を徹底的に考える、デザインロジックの盾を常に持っておくことです。
ただしそれ以上に大事なのは、デザインロジックはあくまで無茶な要望や、一部分しか見ていないような指摘からデザインを守る為の「防具」であり「武器」ではないということ。
制作者が良いと主張して押し通すようなものより、誰もが見て良いと思える様なものが理想的なデザインだと思うからです。


360度の視野を持ち続ける事
ある程度仕事をこなせるようになってくると、忙しさにかまけてインプットをつい怠りがちになります。
そんな状態が続くと、アイデアが枯渇し、あまり深く考えずに過去の経験則だけでデザインをするようになって、新しいものを生み出すことが難しくなってしまいます。
わざわざインプットを意識しなくても、ネットにつながっていれば情報は事足りると考えがちですが、そこにある情報は最早誰もが手に入れることの出来る情報です。
大事なのは自分の足を使って、デザインが実際に使われるであろう現場に行ったり、人を観察したりして何気なく街をフラフラしてみること。
そうすることで、Macの前に延々と座って考えていた時とは180度予想もしなかったアイデアに巡りあうことができます。
常にインプットを忘れずに、カメレオンの様に360度の視野を持った日常の観察者であること。
普段は誰も気にかけない様なところにこそ、デザインのヒントがたくさん潜んでいると思います。


色々と経験してきたなかで、一貫して思うのは、デザインが人と社会の交差点にある以上、世の中の流れを洞察したり、変化に合わせて新しいスキルや視点を身につける事は必要不可欠だということです。
そういった点では、デザイナーが学ぶ事を止めたとき、それは成長が止まることと同義でもあると思います。


「学びつづける」ということについて、先日行ったフォーラムで、とても印象に残る場面を目にしました。
業界では誰もが知るような有名な方が、他の方の話を聞いている時はその内容を一心不乱にメモをされていて、いつもニコニコしてユニークな質問や発言をして会場をわかせていてる陽気なイメージと、真剣な表情でメモをとる姿とのギャップがとても印象的でした。

何十年と知識や経験を積み、どれほど有名になろうとも人から真剣に学ぶということ。
その姿勢を目の当たりにして、自分のデザイナーとしての数年間はなんとちっぽけだろうか、まだまだ足りてないなぁと、凝り固まった価値観が一気に引っくり返されたような感じでした。

初心を忘れず、今まで自分を育ててくれた会社の人たちや、すべての人に感謝しつつ、より良いデザインを生み出せるよう頑張って行きたいと思います。

と、いうことで、みなさま!
新年度、気持ち新たに頑張って行きましょう!



Popular posts from this blog

細かすぎて伝わりづらい!
iOS 5のデザイン変更点まとめ。

iOS 5のリリースやiCloudの開始、iPhone 4Sの発売と、ここ最近のAppleのプロダクトが一通り出そろった感じですね。 3GSを使っていて常々もっさりしていたので、早速iPhone 4Sに乗り換えたところ、画面の中をスケートをしているかのようにスイスイ動いてくれてとても快適です。 2年前に3GSを使っていたときは、なんて速いんだろうと思っていたわけですが…慣れとは恐ろしいものです。 さて本題ですが、ここ数日使っていた中で気付いた、細かすぎるデザイン変更点があったので 前回のLion と同じようにまとめてみました。  細かすぎるデザイン変更点第2弾、今回も目を凝らしてどうぞ。  1.アイコンバッジ  iOS 4のアイコンバッジのシャドウは濃いめのブラックで強めのシャドウになっていましたが、iOS 5ではグレーっぽく明るくなっています。 全体的に比較してみると、iOS 4のシャドウは浮いている感じがするので、明るくなったことで画面全体のトーンにまとまりが出たように感じます。 2.ボックスデザイン 設定画面などのボックスデザインが、iOS 4ではフラットなラインに対して、iOS 5ではシャドウとハイライトが追加されて立体的なデザインになっています。  iOS全体で同様の立体的なデザインが適用されているので、デザインの一貫性がより高まった感じがしますね。  3.メッセージのハイライト これは賛否両論ありそうですが、iOS 4ではメッセージの文字がプレーンなテキストだったのに対して、iOS 5ではハイライトが追加されてこれまた立体的なデザインになっています。 他にも吹き出しの背景色やシャドウが明るくなったことで、背景と文字のコントラストが高くなり、個人的には文字の可読性が高まって良くなったと思います。  5.回転ロックボタンの厚み iOS 4では回転ロックボタンのシャドウ距離が3pxだったのに対して、iOS 5ではシャドウ距離が4pxとなって、より立体的に見えるようになっています。 反対にミュージックアイコンのシャドウ距離は3pxで変わらずのままですので、1pxの違いをデザインすることで、回転ロックという 機能アイコン と、ミュージックを起動...

icloudのアイコンに隠れた美しさの法則。

Thank you for coming to my blog! this article English version is here. 先日のWWDCで発表されたicloud。アップルのクラウド本格参入ということで色々とサービスが話題になっていますが、相変わらずアイコンのデザインも綺麗に仕上がっていますね。 では、なぜ美しく見えるのか、少し視点を変えてアイコンのデザインそのものに注目して、その美しさの理由に迫ってみたいと思います。 まずは、なんとなく眺めてみましょう。 雲の輪郭が不規則な曲線を描きつつも、とてもバランスのとれた形になっていますね。ワラのなかから一本の針を見つけるぐらい、とまではいかないと思いますが、シンプルでバランスのとれた形にしながらも雲に見えるような形に定着させるのは、簡単そうに見えて意外と難しく、磨き抜かれたデザインだということが分かりますね。 なんとなく眺めているだけでは美しさの理由に迫れないので、もう少し目を凝らして見てみましょう。 勘の良い方は既にお気づきだったかと思いますが、形の中に4つの円が隠れていることに気がつきます。一見、何となく描いたように見えるカーブでも正円で構成することでバランスのとれた形になっていることが分かります。 つまり、 「アイコンの美しさは幾何学で構成することにあり」 ということが分かるわけですが、単純にランダムな円を配置していくだけでバランスのとれたデザインに仕上げることができるか、と考えるとあらゆる可能性が頭をもたげ、少し疑問に思えてきてしまいます。 そこで、さらなる理由を追い求めて、今度は円の直径を測ってみました。 すると… なんとまあ、それぞれ左右の円の比率が1:1.6と、見事に黄金比に近い比率になっているではありませんか。 さらにさらに、雲の形の比率も調べてみると…。 まさに、「One more thing」。 幾何学だけでなく、黄金比のような原理的な法則を駆使しながら、美しさを無意識に訴えかけるスキのないデザインに仕上がっていますね。 まとめてみると… ・曲線を幾何学で構成(補正)することでバランスのとれた形になる ・細部のランダムな大きさの中にも一定の法則を適用することで、全体的にバランスのとれたデザインになる シンプルなのに奥深い。...

細かすぎて伝わりづらい! iOS 6のデザイン変更点まとめ。

iPhone5やiOS 6のリリースなど、アップルユーザーにとって目が離せない日が続いていますね。 iOS 6に関しては地図アプリが散々なもので正直ガッカリですが、UIは全体的に使いやすくなって、じっくり観察してみると細かすぎる変更点も健在でした。 大きな変更点に隠れた細かすぎる変更点たち、その涙ぐましささえ感じる進化をどうぞ! ■設定アイコン iOS 5では歯車の形が尖っていましたが、iOS 6では角が丸くなってソフトなイメージになっています。 OSXの設定アイコンと同じになったので Back to the mac の方針がアイコンでも徹底されているようですね。 ■時計アイコン 設定アイコンと同じ様に、iOS 5では時計針のシャープな印象でしたが、6では太さが一定になり、角張った印象になっています。 Apple製品がブラウン製品とよく似ている という事から考えると、 ブラウン社のアラームクロック に、よりデザインが似てきていますね。 ■ヘッダー iOS 5では光沢感のある質感になっていましたが、iOS 6ではそれがなくなってマットな質感になり、さらにシャドウが追加されています。 iPhone 5の背面もマット加工がされていることから、ハードとソフト両方の質感を統一してきているということが分かります。 ■アクションシートのボタン ヘッダーと同じ様に、光沢のあったものが、iOS6では光沢感がなくなりマットな質感になっています。 個人的には光沢のある感じも好きでしたが、新しいボタンもグラデーションの感じが綺麗で良い感じですね。 ■カメラアイコン やや角張った印象のアイコンでしたが、iOS 6 ではより丸っこくなってかわいらしい感じのアイコンになっいます。より親しみやすさを重視して来ているということでしょうか。 ■キーボードの角 iOS 5ではキーボード下部に角丸の処理が加えられていましたが、iOS6ではそれが無くなって直角になっています。 ジョブズ氏の伝記で、アップル製品で角丸が多いのはジョブズ氏が角丸にこだわっていたから、というエピソードがありましたが、もうその必要性が無くなった、ということでしょうか。 ■メッセージアプリ iOS 4からiOS 5に変わった際に追加...